『眠りの魔術師メスマー』

    ジャン チュイリエ著 

    工作舎 1992年1月

    英語で催眠術の表現の一つとして用いられる「mesmerism」という単語があるぐらいに、催眠技術の歴史を語る時に、必ず登場するのがフランツ・アントン・メスメルです。その伝記がこの書籍です。 権威あるウィーン大学の博士号も含め、複数の学問分野で博士号を取得したメスメルは医師となり催眠施術を始めフランスの貴族階級の大評判を呼び、メスメリズムは18世紀ヨーロッパを瞬く間に席巻しました。しかし、メスメル本人はそれを生物が持つ“動物磁気”を調整する技術と理解していて、決して精神的な施術であることを認めませんでした。西洋における催眠の原点を知ることができる貴重な資料です。

    『催眠の謎』

    マイケル・ストリーター著 

    ガイアブックス 2005年

    海外における催眠術全体の考え方や扱われ方が、体系立てた章構成と多数の写真や図解で説明されている催眠術の教科書的な書籍です。 催眠術の歴史と、そこに登場するアントン・メスメルやミルトン・エリクソンを始めとする催眠の“巨人”たちの業績について、図鑑をめくるような気分で気軽に知ることができます。催眠術の具体的な活用分野や、自己催眠のテクニックとその実践方法など、この一冊で俯瞰的な“催眠観”が確実に身につく、とても分かりやすい入門書です。

    『霊術家の黄金時代』

    井村宏次著 

    ビイングネットプレス 2014年

    催眠術の歴史を紹介する書籍の多くでは、エジプトや古代ローマなどの文明における事例から始まり、一足飛びにアントン・メスメルに至り、何人かの偉大な先駆者の紹介を経て、ミルトン・エリクソンに至ります。 日本に催眠術が紹介されたのは明治の文明開化の際です。しかしそれは、先述の西洋における“催眠術”の導入のことで、それ以前に、日本には明らかに催眠術と根を同じくする術や技が存在していました。修験山伏たちや日本古代の武術家たちが持っていた技術です。 それが明治政府の廃仏毀釈などの宗教弾圧によって弱まり、一部が西洋催眠術と重なり合って、大正から昭和初期に急速に拡大し、全国に数万人単位で存在した“霊術家”たちへと変貌して行きます。その霊術家たちを描いた内容です。

    『催眠術の日本近代』

    柳廣孝著、青弓社 2006年

    明治から昭和初期にかけての日本において催眠術が、社会的にどのように認知されてきたのかを多数の文献にあたりながら分析した内容です。有名な福来友吉の千里眼実験や、学校教育に採用された村上辰午郎の「村上式注意術」などにも詳しい言及があります。 森鴎外が『魔睡』で、医者が女性に催眠術をかけて凌辱する妄想を描いていたことなど、当時の日本において、今以上に広く認知されていた催眠術の様子が分かる一冊です。

    『ヒプノセラピー』

    J.フリッカーJ.バトラー共著
    ガイアブックス 2004年

    欧米諸国での広く医療と連携して実践されている催眠療法について、その各々の応用分野を丁寧に解説した書籍です。「医学的問題」の章では、高血圧・湿疹・喘息・過敏性腸に始まり、頭痛や腰痛、そして癌に至るまでが紹介され、日本における催眠技術に対する社会的認識との大きな隔たりに驚かされます。 応用分野ごとの具体的な施術のありかたなどには踏み込んでいませんが、催眠技術の持つ大きな可能性について学ぶことができる書籍です。